「アウシュヴィッツ・レポート」(映画感想)
アウシュビッツ強制収容所を脱走した2人の若いスロバキア系ユダヤ人のレポートによって、12万人のユダヤ人の命が救われた実話を映画化した人間ドラマ。第2次世界大戦中の1944年、ユダヤ人が収監されたアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所で、過酷な労働を強いられて殺害される人々の遺体記録係をしているスロバキア人のアルフレートは、ナチスドイツによる、その残虐な行為の証拠を持ち出し、有力者に届けるために脱走を企てる。協力した仲間たちは「正直に話せば全員宿舎に戻れるんだぞ」と執拗に拷問されるが、アルフレートたちはホロコーストの真実を世界に伝えるため国境を目指す。奇跡的に救出された2人は、赤十字職員にアウシュビッツの実態を告白し、レポートとして提出するが……。脱走する2人を「オフィーリア 奪われた王国」のノエル・ツツォル、新人のペテル・オンドレイチカが演じるほか、2人を救済する赤十字職員役を「ハムナプトラ」シリーズのジョン・ハナーが演じる。第93回アカデミー国際長編映画賞のノミネート作品選考に際し、スロバキアの代表作品に選出された。(「映画.com」より)
ホロコースト関連映画を何本も観てきて、収容所の様子をリアルに描いているであろう作品もそれなりに観てきたつもりなんですが、これは相当当時の記録に忠実なのでは…と戦慄する映像でした。
勿論、ホロコースト映画は、どんな作品であっても史実よりも惨い映像なんてないはず。
それは分かっていても、班の全員が連帯責任の名のもとに、真冬に何日間も屋外に立たされ、責任者が見せしめに惨殺される…生き残った人々が記した描写を再現できるぎりぎりの映像が次々現れて、正視できない瞬間も何度か。
厳しかったけれど、最後まで観た!
ナチスのSS達が画一的な極悪人ではなく、彼らも苦しみ悲しみを抱えた人間である、と思える余地を残した描かれ方で、そのことが中盤の一縷の救いというか。
後半は、脱走に成功した2人の主人公に、更に厚い壁が立ちはだかるような展開になりますが、それまでの、(肉体の)命を賭けた闘いとは違い、別の意味でとても残酷。
ナチスも、赤十字も、人が作った組織でありながら、制御不能な集団になっていくという、ただその一点だけは似ているのかも、と思いました。
個人が集まって組織になるのに、その組織に立ち向かう個人は玉砕する…今も続く現実ですね。
エンドタイトルで流れる世界各地のヘイトスピーチ音声に、監督のメッセージを感じました。
ホロコーストは今も続いているし、目を光らせていないとレイシスト達の声はあっという間に肥大する。
自分の身近にもそんな事象があるかも。
0コメント