「牛久」(映画感想)
約1年前に、名古屋入国管理局で、ウィシュマさんというスリランカ出身女性が亡くなった事、そして死までのプロセスを入管が公開しなかった事から、日本の入国管理行政の問題がニュースになりました。ウィシュマさんの遺族は、現在、国家賠償請求訴訟を起こしているそうです。
この映画の監督、トーマス・アッシュ氏は、牛久の入管で、入所者が虐待を受けているという情報を聞き、面会室のアクリル板の前に隠しカメラを置いて彼等との会話を録画するという手法を使っています(だから画面も音声も不鮮明)。
これが映倫を通って公開されているということは、少なくとも入管での隠し撮りは、規則違反ではあっても犯罪ではない、ということなんでしょうか…何にしても凄い映像です。
職員が大勢で抵抗する入所者を制圧するビデオも延々流れて(何故こんな映像が入手できたのか分からない)、正直、観続けるのがしんどかった…。
ここに登場する入所者たちの証言は悲惨です。不鮮明ながらも、表情も口調も怒りと悲しみに満ちていて…そんな中でも「神に祈っている」「今生きていられることに感謝している」と。
とにかく、初めて知ることばかりが大画面に映し出されて、この「入管法」の意味が全く分からなくなりました。
日本という国の治安と秩序を鑑みた法律なんだろう、ぐらいに思ってましたが、この映画を観ると…完全に性悪説に則っているというか、訳の分からん外国人は駆逐!くらい思ってるんじゃないか、とか。
職員の人達の応対も疲弊しきって荒れている様が伝わってきました。
人ってこんな風に残酷に攻撃的になれるんだ、と。
仕事とはいえこれはしんどいと思う。
そしてこういう仕事をして精神が崩壊している人達は、世の中に無数にいるんだろうとも。
とても惨くて辛い映画ですけれども、この現実が世の中に知られなければ、現状は変わらない訳で、監督もこういう手法で撮る決断をしたのだろうと思います。
この問題の声を聴き、国会議員として行動を起こしているのが、石川大我参議院議員で、この人の名前も今回初めて知りました。
初めて、ゲイを公表して当選した国会議員だそうです。
こういう問題の告発や、改善のための運動など、本当に自分は知らなかったし、知ろうとしなかった。
観終わった後、理不尽な事実に対する怒りや、何も知らなかった自分に対する情けなさとか、負の感情がずっしーんと・・・
だけど、これを観ようと思った事、観に行った事には絶対意味があるのだから、と自分に言い聞かせて帰ってきました。
劇場は半分以上埋まっていて、時折ため息や小さな呻き声も聞こえてきました。
でも、この映画のお陰で、知ることが出来た人が増えたとも言えますね。
大阪では、第七藝術劇場で上映中です。
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