「真実 パトリシア・ニール自伝」(読書感想)

1990年刊。ふるっ、んで誰?と思われるでしょうけど、1950~60年代に活躍したハリウッド女優で、アメリカとイギリスのアカデミー賞主演女優賞もとっている人。
オードリー・ヘプバーン主演の「ティファニーで朝食を」に出てる人。

何年も前から読みたいと思っていて(きっかけは小林信彦のコラム)、でもそう思った時点でもう絶版になっていて…この度やっとこさ、という感じで読み始めたのですが、ジェットコースターのような人生で、読了後息切れがしました!

この人は、若い頃、ゲーリー・クーパーの愛人だったことで話題になったそうです。ゲーリー・クーパーは家庭を大事にするイメージで、そんな彼が唯一起こしたスキャンダルが、この人との恋愛だったそうで…本には、彼との蜜月がしっかり描かれています。

ゲーリー・クーパーとの結婚を夢見るけど、当然それは叶わなくて、彼の子どもを中絶して、違う道を進みます。んで、結局一緒になった相手が、イギリス人の、ロアルド・ダール!「チョコレート工場の秘密」を書いた人!

他の交友関係も凄くて、リリアン・ヘルマンとか、メル・ブルックスとアン・バンクロフト夫妻とか…このパトリシア・ニールという人は、日本ではそんなに知られていないけど、アメリカでは大女優で(何といってもアカデミー受賞)、それに、子どもの事故や病気、本人の脳卒中など、本当に試練が沢山あって、晩年は講演会や慈善団体の活動がメインだったようです。

ロアルド・ダールとの結婚生活は、彼の度重なる浮気で崩壊するのですが、ゲーリー・クーパーへの思いを断ち切れないまま彼と「愛のない結婚をした」と書いている割には、嫉妬で狂って立ち直れずにいた描写が延々続きます…自己を見つめ直す為、ある修道院で暮らしている時の、シスターとの対話が凄い。

「人間はだれでも十字架に、ちょうど脳卒中に見舞われるように、直面しなければならなくなります」とシスターはいった。「あなたの場合は人並み以上に劇的でしたが、それは、あなたが女優をやっていらして、主があなたのこの上なく誠実な夫でいらっしゃるからです」

「わたしはどこに行っても夫のためを思っていたんです。それが、あんな人間になり下がってしまって」

「人のためを思っていながら、後になってそれで恨むというのでは、母親とはいえませんでしょう」

「わたしはすべてを失ってしまったんですよ、分ってはくださらないんですか。あの女がみんな、わたしから奪ってしまったんです」

「あなたご自身は、失ってはいませんね」

そんなことは聞き飽きていた。「脳卒中なんかにやられてしまって。体だって利きゃしない。わたし、怖いんです、ひとりじゃやっていけないし、なれの果ては宿なし婆。分ってはくださらないんですか。だからわたしは傷ついているんでしょう」

「苦しみに耐えることにはいつも意味があるものです」

「あんないんちき野郎にはもう愛想がつきた」

突然、シスターが立ち上がった。眼が燃えている。

「わたくしも、あなたの口汚い罵りとたわごとには愛想がつきました。うんざりです。あなたにとって大事なのはそのことだけじゃありませんか。偉大な女性は円満なもの。他人のために生きているものです。いいですか、パトリシア、『百パーセント正直』なのですよ。偉大な女性が純粋なのは、理解することができるからです。そりゃたしかに、人間には、あからさまに非難しなければならない部分があります、しかしまた、腐敗の中に豊饒を見つけなければならないこともあるのです。あなたは人間の雌にはなりたがっていますが、人間らしい女になりたいとは思っていません。時間をかけて吐き出せば、悪いものがすっかり体から出て行ってしまい、代わりになにかを求めるようにおなりになるだろう、わたくしはそう思っておりました。ところが、あなたはここに来ながら、なにも求めてはいらっしゃらない。だったら、ここにいらしても無駄です。さ、お引き取りください。」
(P500~501 第四部 残るものは愛のみ)


シスターにここまで言わすって…10や20の愚痴じゃなかったってことですよね…かっちかちに固まってしまってたんだなあ、と。

シスターの「腐敗の中に豊饒を見つけなければならないこともある」という言葉は響きました。

いついかなる状況でも、豊饒を見つけられることが出来たら!

結局この人は、シスターに叱咤されたことがきっかけで大きな気づきを得ます。そこで自伝は終わっていて、2010年に亡くなっていますが、最晩年はどんなだったのだろうか・・・。

ドラマチックではあっても、やり残したことが多かったのでは…?という気がしました。

1949年公開。ゲーリー・クーパーとパトリシア・ニールの共演作。レビュー見たらめちゃめちゃ評価高い!今度観ます!

ゆとりらYOGA

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