「熱海殺人事件」観劇
去年の12月、東京は紀伊國屋ホールで上演された「熱海殺人事件」。
今年からは全国ツアーで、関西では近所の兵庫県立芸術文化センターで3公演。
その千秋楽に行ってきました。
35年近く前のつか劇団オリジナルには間に合わなかったけど、その後の塩見三省版、池田成志版、阿部寛版とずっと追いかけていた芝居でした(阿部寛はつか芝居の時だけ「あべかん」で役者紹介されてましたっけ)。
今回も、オープニング・・・非常灯も全部消えて真っ暗になったところで、チャイコフスキーの「白鳥の湖」がうっすら流れてきて大音響!で一気に緞帳が上がる瞬間!
ここでもう涙腺が決壊してしまいました・・・
この公演は、オリジナルキャストの風間杜夫と平田満、そして、つかこうへいの愛娘の愛原実花が共演するという話題作で、何と演出は劇団新幹線の、いのうえひでのり。
そういう文脈込みで観ると本当にすべてのシーンが味わい深い。
脚本は初期の台詞が相当残ってたし、演出はちゃんと「いのうえ歌舞伎」シーンが入ってる!
客席は当然というかやっぱりというか、結構年齢層高かったです・・・
で、びっくりしたのは幕前アナウンスで「補聴器をつけたお客様へのご注意」があったことです!(つか芝居は音楽のカットインとオフがめっちゃ多用されるので、確かに補聴器使ってる人にはキツそうですけど・・・なんかしみじみしました・・・)
風間杜夫演じる木村伝兵衛部長刑事は色気と外連味がものすごい。
ラストの名台詞でまた涙腺決壊・・・
若い頃はこの戯曲、ただただスピーディーで熱量が高くて思い切り笑って酔えるおもしろ芝居だと思ってました。
でも今回観て、少し解った気がします。
不細工な女性とか田舎の工員をめちゃくちゃ馬鹿にしながら、思想のない男を一流の殺人犯に仕立て直す、というこのお話は、何が善で何が悪か?を常に客席に問いかけながら時を遡ってまた戻ってくる壮大なラブストーリーなんだなあ、と。
でも、あまりにもナンセンスで差別発言が凄いから、若い時ってそっちの面白さやどす黒い快感に流されてしまってたのよね・・・
あと10年たってまた観たら、もっと違う何かが見えてくるかもしれません。
この作品、1974年に岸田戯曲賞をとってるんです。もうクラシックですね。
それが今観ても泣けるし笑えるし感動する!泥臭さも青臭さも込みで全部好きです。
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