「パリ、テキサス」(映画感想)

ジム・ヴェンダース監督の最新作「PERFECT DAYS」が話題になっているそうで、同監督の「パリ、テキサス」も劇場でかかってる…!

いつか観たいと思いながら未見だったので行ってきました。

前半と後半で旅する仲間が変わるちょっと複雑なロードムーヴィー。

極端に台詞が少なくて、特に主人公のトラヴィスは、始まってから30分くらいは全く喋らない。心配していろいろと聞き出そうとする弟に共感しながら観ていると、少しずつ少しずつ、お話が展開していく。

若い時にこの作品を観ていたら、退屈して何も心に残らなかったかもしれない…それくらい、観客との根競べみたいなシーンが続きます。

ナターシャ・キンスキーの登場はかなり後半で、それも衝撃的な出方ではなくて、じわりじわ、ハラハラ…ああ、やっぱり という感じ。

だけどそこからラストにかけての揺さぶり方がすっごい!

主人公2人の過去が、マジックミラー越し、電話越しの対話だけで語られる場面で、トラヴィスの行動の謎も解ける。

回想シーンなどなく、ただあるのは自分たち家族3人と弟夫婦で遊んだ時の8㎜ビデオだけ。その後どんなに悲惨なことが起こったのか、2人がどれだけ苦しんだかが、語りだけで伝わってきました。

このお話、皆がきっと少しずつ成長はしているんでしょうけど、状況としてはかえって悪くなってる気がする。父は去り、母は子どもに会えたけど、一緒に暮らせる基盤は弱い。子どもを自分の子として大事に育ててきた主人公の弟夫婦は、子どもに去られてこの先どうなるのか。

息子を持つ身としては、いきなり子どもを奪われる弟の妻・アンの気持ちと、実の母・ジェーンが子どもを手離した理由を「空しさを埋めるために使いたくなかった」という気持ち、どちらも分かる気がします。もちろんアンの、引き裂かれる辛さの方が想像しやすいけど、ジェーンが子どもと一緒にいることを諦めたプロセスもまた、惨くて苦しみに満ちたものだったと思えます。
皆、違う種類の苦しみに直面して、8歳の少年の存在がその要因でもあり、大人たちは自分の感情の処理にいっぱいいっぱいだけど、この少年はそんな彼らを見守りながらすべてを超越しているように見える。

観終わって、タイトルの「パリ、テキサス」が持つ意味を考えました。

フランスのパリではなく、テキサス州にある小さな町パリスのことで、なぜトラヴィスがその土地に拘るのか…自分のルーツを知りたいというか、結局、(物理的な場所ということだけではなく)人は生まれたところに戻りたいんだろうか。

父のDNAが自分にも受け継がれて、うまく社会を渡っていけない自分をこの先どう御して生きていくのか。

年老いた今、一人で黙々と修行僧のような生活をしているんじゃないか…なんて感じました。

この作品、皆が本当にどこかにいて、今もそれぞれのところで真摯に生きているように思えます。

ゆとりらYOGA

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