「炎上」(映画感想)
没後50年ということで、市川雷蔵の特集上映をやっていまして、ずっとスクリーンで観たかった「炎上」を観てきました。
市川雷蔵は1969年に夭折しているので、勿論私はリアルタイムでは知らないのですが、ずいぶん前に眠狂四郎シリーズを何本か観て、あまりの美しさ(と台詞の面白さ!)にクラクラして、以来、劇場にかかった時は出来るだけ観に行っています。
「炎上」は三島由紀夫の「金閣寺」が原作で、監督は市川崑。
雷蔵はこれが初の現代劇だったそうで、この作品で、キネ旬やブルーリボンの主演男優賞を受賞しています。
「金閣寺」は昔々に読んだきりで、暗い青年が金閣寺に放火する…というところしか覚えてなかったけど、この「炎上」は、モノクロ映画にもかかわらず、クライマックスの炎上シーン(金閣寺の名前を使うことは住職からNGが出たそうで、映画では「驟閣寺」)が、物凄い迫力で、火の粉が舞う様が物凄く美しい!
お話は、何というか、とても内面的な展開で、主人公の友人でめちゃくちゃ気の良い優しい徒弟仲間がいるんだけど、その彼がちょっと薄気味悪く感じるくらい、全体のトーンが暗い。で、その友人は中盤で退場して、その後あっさり事故死したということが説明台詞でわかるだけ。
その後現われる、仲代達矢扮する、身体に障害を持つ悪友の存在感が凄くて…もうこの人と関わると、どんな善人も心の奥の奥まで全部見透かされて暴かれそうな怖さ(゜Д゜)
吃音の主人公と、口八丁の悪友の顔のUPが交互に出るだけで胸が苦しい…
そういえば、この作品には、今では使われない「どもり」や「かたわ」といった言葉が飛び交います。そして当然のことながら、そういった身体的現象は、内面と大きく関わり合って悲劇が膨らんでいく。
これは原作ではどんな風に表されているのか、俄然興味が!
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