「世界で一番美しい少年」(映画感想)

若い頃、ルキノ・ヴィスコンティ監督「ベニスに死す」をビデオで観て、2年程前には「午前十時の映画祭」にもかかっていたので観に行きました。

ビデオで観た時は、正直、長いし画面も暗いし、話が全然動かないように思えて、これ、なんなん?と思ったのですが、とても現実とは思えないような美少年が出ていて、その彼をスクリーンで観たい!と思って。

数十年ぶりに観た「ベニスに死す」は、ダーク・ボガートの哀しみと惨めさが画面いっぱいに広がって、美の儚さとか、階級社会の滑稽さも受け取った凄い映画体験でした。

その美少年、タジオ役のビョルン・アンドレセンの半生を描いたドキュメンタリー。

現在、66歳らしいけど、まるで仙人のような風貌。そんな彼が、15歳の時、ヴィスコンティ監督のオーディションを受けた時の映像が序盤から流れて、もうそこから惨いというか何というか…

ヴィスコンティは当時からバイセクシャルであることをオープンにしていたそうで、この映画では、直接的な告白はないものの、「ベニスに死す」のクルー(皆ゲイだったらしい)からうけた性的虐待や、その後、日本で仕事をした時の酷い扱われ方が分かるような構成になっています。

特に、ビョルン・アンドレセン本人が来日して、当時の関係者と会ったり、彼等から思い出話を聞いたり、というパートが容赦ない。

日本の業界人たちが、彼を、金にあかせて踊らせていた様子…音楽プロデューサーの酒井政利や漫画家の池田理代子がインタビューに応じているんだけど、その時点では、彼のその後の人生のことをあまり知らされていなかったようで、ただの、良き時代の思い出話に終始してるのが、いたたまれない気持ちになりました。

美しい容姿だけを認められ、人格を尊重されることなく搾取される少年時代・・・。

子役が虐待される悲劇、みたいな図式が分かりやすく描かれるので、観ててどんどんきつくなってくる。

でも、ここが更に残酷なんだけど、とにかくこの少年が本当に美しいので、辛いけど観てしまう。当時彼は訳も分からず大人の言いなりになっていたんだ、と知りながらも「ベニスに死す」を傑作と思う気持ちは変わらない、という二律背反的な感情が湧き上がってくるのです。

「ベニスに死す」公開の後は、主に日本が加害者、みたいな描写で彼は絶望しながら成長していきます。

勿論、生きてきた中で幸せだった時もあった筈なんだけど、彼の出自も、大人になってからの様々な喪失も、なんでこんなにこの人不幸なの…って思ってしまう。

周りも、そして彼自身でさえも「美少年」という足がはやい「いれもの」に翻弄され続けた50年だったのでは、と思います。

この中で、池田理代子が、「ベルサイユのばら」のオスカルのモデルはビョルン・アンドレセンだと言ってましたが、個人的には、木原敏江の「摩利と新吾」の鷹塔摩利がそっくり!絶対影響受けてると思います。

ゆとりらYOGA

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