「つかこうへい正伝」感想

新刊です。

著者は、元・劇団つかこうへい事務所所属の俳優で、今は演出家・脚本家の長谷川康夫氏。今公開中の映画「起終点駅ターミナル」の脚本を手掛けている方です。

私は高校生の頃初めて、小説版「蒲田行進曲」を読んで、そこからずぶずぶとつか氏の世界に嵌りました。

深作欣二監督の映画にはギリギリ封切時に間に合いましたが、伝説の「つかこうへい劇団」の舞台は1度も観ることは出来ませんでした・・・



私がつか劇団を知ったのは、東京で解散ロングラン公演を行っていた頃で、本当にタッチの差で間に合わなかったんだなあ、と思います。

(その後、つか氏は、岸田今日子の主役で舞台演出にカムバックして、第2期・第3期とつかブームみたいなのが起きたので、その時の作品は殆ど観ているんですが・・・)

映画「蒲田」の大ヒットや、つか氏脚本のTVドラマが観られたこと、当時の日々が「超現実日記」というエッセイで読めたこと、等、劇団解散後の残り香みたいなものだけは感じていました。

なので今回、当時つか氏のすぐ傍にいた著者の証言を聴くような気持ちで、わっくわくしながら読みました!


 傍若無人で小心で、残酷なくせに心優しく、とことん楽観的だと思ったら、死ぬほど悲観的になる・・・世の中の人間すべてをバカと呼び、稽古場で芝居が気に入らなければ、役者を一日罵倒し続け、取材が入れば、どの役者よりも目立とうとする・・・打ち上げで褒めた役者が笑顔でも見せようものなら、激高してテーブルのビール瓶を足で払い、カラオケでマイクを握れば、誰にも歌わせず、そのくせ他の客からクレームが来たとたん、シュンとして店を出ていく・・・。(P11~P12)


“口立て”という芝居作りについて、つかはこんなことを言っている。

「役者が持っている言葉以上の台詞は生まれてこない」

「俺の哲学と役者の哲学が共鳴し合うことで、初めていい芝居が生まれる」(P423)


小説『蒲田行進曲』でも、ヤスは日大芸術学部卒業であり、銀ちゃんは中卒ということになっている。つまりヤスの方が圧倒的にインテリで育ちもよく、銀ちゃんはどこの馬の骨ともわからない、怪しい生まれなのだ。舞台でも映画でも、そこのところにはあまり触れられていないが、それが本来、つかが考えた『蒲田行進曲』の構図である。

 ヤスの銀ちゃんへの理不尽なまでの恭順は、知識や教養、ましてや育ちなどがなんの力も持たず、ただただ俳優としての力量だけがものをいう世界で、したたかに勝ち抜いていくその姿に対する無条件のあこがれなのだ。それはそのまま同じ意味で、自分が大部屋としてしか生きられないことへの自虐でもあり、決して敵わない、銀ちゃんの人間としての魅力への敗北感から来る、ある種の開き直りでもある。(略)

 よく『蒲田行進曲』という作品の構造を、つかの国籍問題と絡め(注:つか氏は在日韓国人)、「虐げる側と虐げられる側の関係が・・・・・・」などと、解説する人間がいる。つまり銀ちゃんが「虐げる側」で、ヤスが「虐げられる側」ということなのか。だがその関係性は、むしろ逆なのだ。それこそが、まさしくつかこうへいの「逆説」であり、さらに言えば、そんなに簡単に割り切れるものではないというところもまた、つかこうへいの「世界」なのだ。(P494~P495)

この「蒲田」解説は、本当にその通りだと思う。殴られて蹴られて、妊娠した恋人を押し付けられるヤスが可哀想なんじゃなくて、そうやって周りを苦しめてスターの座にしがみつく出自の怪しい銀ちゃんこそが哀しい存在なんだと。

小説版「蒲田」には続編があり、それを読むと、つか氏が描きたかったのは主人公3人の関係性よりも、ただただ銀ちゃんのカッコよさ、切なさ、だったんだな~と思います。


著者の長谷川氏は、劇団つかこうへい事務所立ち上げ前から解散まで、第一次つかブームの真っ最中にずっと傍にいた人です。今回この本を読んで、この人が俳優としてだけではく、当時の戯曲やエッセイのゴーストライティング(らしきもの)を請け負っていたことを知りました!

実際には、つか氏から「口立て」で大まかな説明があり、長谷川氏(と、高野嗣郎氏)が文章にする、それをつか氏が添削し、何回かそのやり取りが繰り返されて、清書まで長谷川氏の手で行われたそうです。

芝居作りと同じような手法・・・

ですが、この本での長谷川氏の文章には、暴露話っぽい感じはまるでありません。


当時の、熱に浮かされたような日々がつか氏への屈折した愛情と共に描かれていて、この人達の関係って、本当につか作品の登場人物そのものなんだな、と強く感じました。

相手への愛憎半ばする感情を持て余し、裏切りや罵りで、相手がどこまで許してくれるか試す、はた迷惑な言動の数々!


私は、つかこうへい氏が描く、「無頼を装った真っ当なモラル」が大好きでした。

エッセイでも戯曲でも、こめかみに青筋立てて怒鳴り散らすような勢いがあり、捻じれた暴力描写が最終的に愛情に帰結していく流れに何度もやられました。

「熱海殺人事件」が発表されてからもう40年以上。

今、東京の紀伊國屋ホールで上演中です。来年の1月は関西にも来ます。

風間杜夫と平田満が当時と同じキャストで出てるそうで、想像するだけで震えてしまう・・・。

楽しみです!


ゆとりらYOGA

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