「無敗の男 中村喜四郎 全告白」(読書感想)
この本、新聞の書評で知った時、めっちゃ興味を惹かれたんですけど、図書館で予約して気長に待とう…と思ってたら本当に長いこと手元に来なかった(。>ㅅ<。)
で、やっと借りれた時は、暑さでげんなりしてて、政治家のノンフィクション…こういう小難しいの読む気分じゃないなあ、なんて思っていたのですが。
でもパラパラめくってたらぐいん!と引き込まれて、もう毎晩お布団での読書タイムが楽しくて楽しくて!
すごいです。茨城7区で無敗の国会議員の聞き書き本。50代以上の人ならこの人の顔覚えてるはず…若い頃はカッコ良かったんですよ。
とにかく、この中村喜四郎という一個人の凄まじい生き方に圧倒されます。
―選挙というものは、カネや数の力では動かせないということでしょうか。
「結局、カネとか、仕事とか、立場とかで釣れるのは一回限りですよ。一回目に何千円でお願いしたら、次は何万円も出さないと人はやってくれません。どんどん刺激を強くしていかなければならなくなる。仕事も一度紹介したら、その後も応援してもらうために仕事をあげ続けなくちゃいけない。すると我を忘れてどんどん、どんどん危ないことをするようになる。(略)
(P99 第二章 成り上がりのプリンス)
ド正論。選挙や政治じゃなくてもそうですよね。
結局他者との関わり合いって、自分の内側にあるもの以外は、何の武器にもならない、そんな気がします。
「我を忘れてどんどん、どんどん危ないことをするようになる」っていう言葉がリアル…自分でコントロールできなくなってしまう領域に、あっという間に突入してしまう怖さが伝わってきます。
※街宣について
「事情がわからない人が追いかけて見ても、何も反応ないな、と思うだけでしょう。無反応なことをなぜ毎週やっているのか、何のためにやっているのか、わからない。選挙の時とは全然違う。本当に反応ないからね。私は反応がないということを確認しながら歩いているわけだから」
無反応を確かめる―。そんな営みに何の意味があるのだろうか。
「ほとんど無反応ですよ。でも、当事者としてきちっとしたローテーションで回っていると、無反応であることに何にも不安を感じない。そこが不思議だと思うでしょう。それは反応があろうとなかろうと、ちゃんと届いている。このやり方で届くから、自民党に風が吹こうと民主党に風が吹こうと関係ない。自分のやり方を貫けば届く。適当になり出したらダメだ。きちんとやれば届く。少なくとも今までは届いてきた。そういう感性を磨いている」
私はあまりに個性的な中村の一面に触れているうちに、ため息しか出てこなくなった。「超人」と呼ばれる人物には、一風変わった習慣が多い。「朝カレー」の意義をとうとうと説く、元メジャーリーガーのイチローと話しているような気分になってきた。
(P107 第二章 成り上がりのプリンス)
この人は毎週土日は必ず地元に帰り、街宣車で選挙区をくまなく回るそうです。
(毎日駅前に辻立ちする議員さんがいますよね。それの移動版で、駅の少ない田舎にはこういう街宣車方式は割と多いと思います)
選挙区は広いので、土日×2週=4日で、全区域網羅。1か月に2回廻れるということ。これをルートと時間をきっちりと決めるので、月に2回、同時間・同集落に、必ずこの人の街宣演説が道路から聞こえてくるという計算。
議員になってからこのルーティーンをずっと続けているらしいです。
無反応であっても不安を感じない感性を磨く…というのは、要は外側がどうであっても内側の自分には影響しないマインドを育てるということですね。
「私のことを面白おかしく『日本で一番選挙に強い男』と呼ぶ人たちがいるけど、七十歳を超えて、一日十二時間、オートバイに乗れますか。当選十四回になっても選挙期間の十二日間、乗り続けられますか。選挙はそのくらい厳しいもんですよ。恥も何でもあるもんじゃない。セクハラやパワハラで選挙で落っこちる時代に、実刑食らった人間が国会議員で居続けられるはずがないでしょうよ。手品を使ったって当選できないのに、選挙がうまいとか冗談言わせるなよと思います。こんどは落ちる、次は落ちると思ってヨレヨレになってやっているんだよ。(略)」
(P114 第二章 成り上がりのプリンス)
これは選挙期間中のルーティーン。北関東では割と有名。出陣式の時に大勢の支援者の前にバイクで現れて、そのまま選挙運動中はずっとバイクに乗りっぱなし。
この人の本当の「凄み」はもう本全部を読んで頂くしかないんですが、こういう想像を絶するほどハードな決めごとを、何があっても変えずに習慣化して続けていく、年齢を言い訳にしない、というこの生き方がもう苦行僧というか生涯体育会系というか(@_@;)
両親ともに国会議員で、本人も田中角栄の秘書からスタート、というかなり恵まれた世襲議員かと思ったけど、同期に鳩山邦夫がいたり、竹下登に裏切られたり、挙句の果てに逮捕、服役…と乱気流みたいな人生送って、そして今でも現役の国会議員、しかも昔から組織票は一切持っていない、というのが本当に凄いです(凄すぎてホントかね…と疑ってしまうほど)。
他にも、検察の取り調べを140日間完全黙秘して、名前さえ言わなかったとか、SMクラブに通っていた過去がバレて息子に責められた時の真っ向からの切り返しとか、とても事実とは思えないようなエピが満載です。
余りに面白かったので、楽天ブックスで買って実家の父に送りつけてしまいました!世代的に絶対好きなはず!
↑ Amazonもこちらの読書メーターもとにかくレビューが熱い!高評価!
0コメント